検査室に通されるなり、真織は医師の顔になった。眼鏡のフレームを中指で押し上げ、安心させる様な口調で言う。

「…今回は、少し時間を掛けた検査になります。一慶くん達には、二階の応接室で休んで貰いましょう。さあ、こちらへ。」

 柔らかな物腰でボクに椅子を勧めると、手際良く検査を進めていく真織。医師としての献身的な姿を目の当たりにして、ボクは改めて思った。

これこそが、彼の本質なのではないか──否、そうであって欲しい。衝撃的な真実を知って尚、ボクは、そう願わずには居られなかった。

 …ややあって。
全ての検査が終わった頃には、あれほど混み合っていた待合室も、すっかり落ち着きを取り戻していた。

残っているのは、会計待ちの数人だけである。

 ──見れば。明らかに待ち草臥れたらしい一慶が、ソファに長身を預けて眼を閉じていた。やや離れた処に、熱心に本を読んでいる蒼摩の姿がある。

 応接室で待っているとばかり思っていたボクは、慌てて彼等の元に向かった。

「蒼摩。」

 静かに声を掛けると、彼はゆっくりと顔を上げて、ボクを見る。

「終わりました?」
「うん。ゴメンね、付き合わせて。」