此処での暮らしにも慣れ、各々の人となりも、何となく掴めて来たけれど…。

 一慶の事は、まだ良く解らなかった。
飄々としていて掴み所が無い。

どんなに馴れ合っている様に見えても、何処かで一線を引いている。決して、他人を懐深くに入れようとしないのだ。

それが、少し寂しく感じた。

 それからボク等は、屋敷の裏にある私用ガレージに向かった──のだが。行ってみて、先ず驚いた。駐車スペースの一番目立つ場所にデン!と置かれていたのは、シボレーのトレイルブレイザー。

ピカピカに磨き込まれた、漆黒のボディのSUV車が、これ見よがしに幅を利かせているではないか。

「一慶…車、換えたの?」
「まあな。」

 いつの間に──!?

「厭(ァ)きたから買い換えた。それが何か?」
「──別に。」

 審議会の準備で、屋敷中がソワソワしていた真っ只中に、車を買い換える余裕があるとは…呑気と云おうか、非常識と云おうか。

呆れてモノも言えやしない。

 だが。当の一慶は、すこぶるご満悦の様子で、艶めくボンネットをスッと撫でながら言った。

「良いだろう?」
「………………良いんじゃないの?」
「なんだよ、今の『間』は?」
「別に。」