──こうして。
嫡子審議会の長い長い一日は終わった。
ボクは目出度く甲本家の当主となり、一慶達は《金の星》の四天となった。

 その後の事は、あまり思い出したくない。
大人達は呑んで騒いでの、らんちき騒ぎ。

下品な笑い声や、下手なカラオケに安眠を妨害されて…ボクは、まんじりともせず一夜を明かした。

 邸内に静寂が戻ったのは、東の空が白み始めた頃である。

一体どれだけ呑んだのか?
親父チームの飲みに参加しなくて、本当に良かった。

 ──昼近く。
ボクの私室を、一慶が訪ねて来た。

「おーい、そろそろ行くぞ~。」──と。

まるで、散歩にでも出掛ける様な気楽さで声を掛けられる。ボクは、やや呆れながら応対した。

「そんなに大声出さなくても、ちゃんと聞こえているよ。」

「嘘つけ。寝ていただろう?」

 …鋭い。
実を言うと、朝食後の満腹感から気が緩んで、ほんの少し眠り込んでいたのだ。

 渋々それを認めると、勝ち誇った様に顎を聳やかして、一慶は言った。

「お前さ。」
「…何?」
「ここ、涎垂れてる。」
「えっ!本当!?」

指摘され、慌てて口元を拭うと──。

「嘘。真に受けんじゃねぇよ、バーカ。」