「そう…或る意味、キミのお父さんは生きている。生かしているのは、キミ自身だ。」

「ボク自身…って?」

「キミは、お父さんの霊を『骨』という器に閉じ込め、この世に縛り付けてしまったんだよ。自分の命を代償にして、ね。」

「そんな──!」

…ちょっと待て。
ボクが、何をしたと?

 困惑のあまり、口をパクパクさせるボクに、彼は尚も畳み掛ける。

「キミの気持ちは理解出来るよ。誰だって、慕わしい人の死を受け入れる事は容易ではないさ…でもね。これは禁断の法なんだ。キミのした事は結果的に、お父さんの成仏を妨げ、自分の命をも削っている。早く互いの魂みたまを解放してあげないと、結局どちらも救われない。」

「───みたま。また、魂か…」

 …ああ、もう何が何だか…
急にそんな事を言われても、信じられない。
そもそも、霊や呪術の類なんて医者の管轄外だろう?

これじゃあまるで霊能者じゃないか!

 ボクの考えを察したのか…坂井医師は、ふと優しい顔になった。

「確かに、これは内科医の仕事じゃない。だが、此方の仕事も、僕の生業のひとつには違いない。」

「なりわいって?」

「ボクは、癒者(イシャ)なんだ。『癒す者』という意味のね。どちらが本業なのかは、自分でも判らないけれど?」

「癒す、者…癒者?」

 不思議な言葉だ。
医学とは違うようだけれど、具体的に何をするのかは解らない。

「──まぁ。この世には、医学で救えない特別な『病』もあるって事さ。今から、それを証明してあげるよ。」

「…え?」