ベーッと意地悪く舌を出す一慶に、ボクは益々ムッとする。
向かいの席では、蒼摩が我関せずの体で食べ終わり、『ご馳走様でした』と丁寧に両手を併せていた。そうして、突然…
「明日は、僕も同行させて下さい。」
──などと言い出したので、ボクは驚き、飲んでいたオレンジジュースを喉に詰まらせしまった。
激しく一頻(ヒトシキリ)り噎(ム)せ込んでから、涙目で蒼摩に答える。
「あ…いや、でも…!ボクの眼科検診に、蒼摩を付き合わせるなんて悪いよ!」
すると蒼摩は、淡々とした口調で。
「問題は検診の後なんです。」
「検診の後?」
「はい。紫さんと、お会いになるんでしょう?その件で…もしかしたら僕は、首座さまのお役に立てるかも知れません。」
「…えーと…紫と会う事に何か問題が?」
「まぁ──そうですね。あると言えばあり、無いと言えば無し。」
「え、どっち?」
「全く問題が無いと言えば嘘になります。それに先程、真織さんが」
「??真織が?」
「はい。僕に、他心通で話し掛けてきたんです。『明日は君もいらっしゃい』…と。一先ず『はい』と返信したのですが、ご迷惑でしたか?」
いや、迷惑も何も──!
ボクの知らない處ろで、そんな約束が交わされていたなんて──!!
行者って奴は、本当に油断も隙もない。
そこへ、不意に苺が口を挟んだ。
「蒼摩に同行して貰って、薙。」
「…何かあるの?」
「まぁね。本当は、アタシが附(ツ)いて行こうと思っていたの。でも、蒼摩が行ってくれるのなら大助かりだわ。是非そうして貰って。」
──そう言うと。苺は、水色のロリポップを片手で弄びながら、慎重に話を続けた。
「…確かに、向坂真織は名医で人格者よ。でも《狐霊遣い》である事には違いないわ。アンタは未だ、自分の力をコントロール出来ない訳だし、万が一を考えて、天解の行者を同行させるべきよ。何事も、用心するに越した事はない。」
──そこへ、一慶が割って入った。
「明日は、俺も同行する。」
「一慶も?」
「向坂の本家は、特異な結界の中にある。その所為(セイ)で、霊障が起き易いんだよ。何しろ曰く付きの家柄だからな。俺には北天として、お前を護るという責務がある。」
「…そんなに…」
そんなに大変な家柄なのだろうか??
何やら背筋が寒くなって来た。
向かいの席では、蒼摩が我関せずの体で食べ終わり、『ご馳走様でした』と丁寧に両手を併せていた。そうして、突然…
「明日は、僕も同行させて下さい。」
──などと言い出したので、ボクは驚き、飲んでいたオレンジジュースを喉に詰まらせしまった。
激しく一頻(ヒトシキリ)り噎(ム)せ込んでから、涙目で蒼摩に答える。
「あ…いや、でも…!ボクの眼科検診に、蒼摩を付き合わせるなんて悪いよ!」
すると蒼摩は、淡々とした口調で。
「問題は検診の後なんです。」
「検診の後?」
「はい。紫さんと、お会いになるんでしょう?その件で…もしかしたら僕は、首座さまのお役に立てるかも知れません。」
「…えーと…紫と会う事に何か問題が?」
「まぁ──そうですね。あると言えばあり、無いと言えば無し。」
「え、どっち?」
「全く問題が無いと言えば嘘になります。それに先程、真織さんが」
「??真織が?」
「はい。僕に、他心通で話し掛けてきたんです。『明日は君もいらっしゃい』…と。一先ず『はい』と返信したのですが、ご迷惑でしたか?」
いや、迷惑も何も──!
ボクの知らない處ろで、そんな約束が交わされていたなんて──!!
行者って奴は、本当に油断も隙もない。
そこへ、不意に苺が口を挟んだ。
「蒼摩に同行して貰って、薙。」
「…何かあるの?」
「まぁね。本当は、アタシが附(ツ)いて行こうと思っていたの。でも、蒼摩が行ってくれるのなら大助かりだわ。是非そうして貰って。」
──そう言うと。苺は、水色のロリポップを片手で弄びながら、慎重に話を続けた。
「…確かに、向坂真織は名医で人格者よ。でも《狐霊遣い》である事には違いないわ。アンタは未だ、自分の力をコントロール出来ない訳だし、万が一を考えて、天解の行者を同行させるべきよ。何事も、用心するに越した事はない。」
──そこへ、一慶が割って入った。
「明日は、俺も同行する。」
「一慶も?」
「向坂の本家は、特異な結界の中にある。その所為(セイ)で、霊障が起き易いんだよ。何しろ曰く付きの家柄だからな。俺には北天として、お前を護るという責務がある。」
「…そんなに…」
そんなに大変な家柄なのだろうか??
何やら背筋が寒くなって来た。