訊ね返した途端。
蒼摩は、クイと片眉を吊り上げた。

「驚いた…やはり初めてなんだ。本当に凄い方ですね、首座さまは。」

 凄い?何が凄いのだろう?
そもそも《念話》とは──何??

「声を出さずに会話をする術よ。」

 口を挟んだのは苺だった。

「念ずる事で、相手と交信するの。魂魄に直接話し掛けるのよ。密教では、これを《他心通(タシンツウ)》と言うわ。」

「それ…難しいの?」
「難しいわね。」
「難しいです。」

 苺と蒼摩が口を揃えた。
知らなかった、そんなに難しいのか─…。
意外に簡単に会話が成立したので、初歩的な術なのかと思っていた。

 まだ何処か納得のゆかないボクを見て、水の少年は補足する。

「他心通は、天解(テンゲ)の中でも非常に難易度の高い術です。一方的に話し掛ける程度なら、多少修行を積めば出来るでしょうが…会話を交わす程となると、これが中々難しいんです。」

「へぇ──」

「…ですので、先程は本当に驚きました。まさか首座さまが、直かに僕の魂魄に話し掛けて下さるとは思ってもみなかったので。」

 言葉とは裏腹に──。
蒼摩は、然して驚いた風も無く淡々と感想を述べた。

 苺が、目敏くその言葉尻を捉える。

「ちょ~っと待って!薙…アンタ、蒼摩に他心通を使ったの!? いつの間に?!」

「うん。審議会の最中に、ちょっと…ね。集まっている霊人達の姿を、視えない人達にも『視せてあげて欲しい』って頼んだんだ。」

「成程。それで私にも先祖霊が視える様になったのですか…。蒼摩くんが、陰で一役買っていたのですね。」

 真織が、感心したように頷いた。