それから程無く。夕食の膳が次々に運び込まれて、賑やかな食事が始まった。

烈火の熱い要望を請けて、食卓には酒類も並んでいる。まるで居酒屋だ。相変わらずの種類の多さに、圧倒されてしまう。

 ──結局こうなるのか。

六星一座は、老いも若きも酒呑みばかりだ。
未成年の筈の蒼摩までが、食前酒と称してシャンパンを呑んでいる。

 話し掛けるタイミングを図って、遠目に眺めていると…

「ところで、首座さま。」

 思い掛けず、蒼摩の方から、ボクに話し掛けてきた。

「改めてお伺いしますが──今まで一度も行を積まれていないというのは、本当ですか?」

「うん、本当。」
「……へぇ。」

 感情の籠らない相槌が返って来た。
無表情で抑揚の無い話し方が、この少年の特徴であるらしい。

改めて間近で見る彼の美貌は人間離れしていて、まるでビスクドールの様だった。

知性を感じさせる高い鼻梁。
くるんと上を向いた長い睫毛。
澄んだ瞳の輝きは、少女と見間違う程に美しい。

感情の映らない整った面差しは、何処か父親の庸一郎に似ていた。何とはなしに眺めていると、蒼摩が不思議な話を始める。

「それでは、念話を使われるのも、さっきが初めてですか?」

「あの…『ねんわ』って何?」