──と、不意に。
何をか気付いた様子で、烈火が言う。

「あぁ、そうそう。篝の奴が、『首座さまにお会いしたい~!』って大騒ぎしていたな。薙…お前、篝と面識があったのか?」

「うん、まあね。」

 そうか…篝には、悪い事をしてしまった。
審議会で助け船を出してくれた彼女には、ちゃんとお礼を言いたかったのに。

 ──そうだ。
もう一人、お礼を言わなきゃならない人がいた。

「ねぇ、蒼摩は?」

「蒼摩?…そういや居なかったな。何処行ったんだ、あいつ?? 先に帰っちまったとかじゃねぇ?」

「僕なら此処に居ますよ。」

 唐突な返事に振り向けば、開け放たれた襖の向こうに、氷見に伴われた蒼摩が立っていた。

 すらりと細い四肢。
人形の様に整った顔。
明るい栗色の髪が、透明感のある肌に良く映えて…思わず見惚れてしまう。

 すると。アーモンド型の眼を無感動に眇めて、次代の《水の星》当主は言った。

「…皆さんが集まっていらっしゃると伺ったので。夕食の膳を、此方に運んで貰うよう、氷見さんに頼んで措きました。」

「流石!気が利くね、水のご当主は。」
「本当、どっかのバカ当主とは大違い!!」

 祐介と苺が、あからさまな充て付けを言ったが、暴飲暴食に耽る烈火には通じなかった。

 広い居間に、姫宮蒼摩(ヒメミヤソウマ)が加わり…気が付けば、新しい《六星一座》の面々が、《東の対屋》に集結している。

怱々たる顔触れに囲まれて…ボクは、本当に当主になったのだと再認識した。