次々に手を出しては、口をモゴモゴさせている烈火を、祐介は、真意の掴めない笑みを湛えて持て成した。

新しいカップに紅茶を注ぎながら、然り気無く訊ねる。

「烈火くん。キミは、火邑家の当主だろう??広間に居なくて良いのかい?」

「あ~、いーのいーの!連中と呑んでも、酒が不味くなるだけだしな。あちらさんは、もう最高潮に盛り上がってるぜ。オヤジの加齢臭でムンムンしてるよ。とても交ざれねぇな、あのノリには。」

「盛り上がってる?最高潮に!?」

思わず反復すると、烈火はニッと笑って…

「あぁ。首座が決まったからな。しかも、神子だろう?そりゃ騒ぎもするさ。どいつもこいつも酔っ払っちまって収拾つかねぇよ。篝とガキ共は、とっとと退散しちまったしな。」

 …いつの間に、そんな惨状に?
おっちゃん始め当主や総代連中が、酔って大騒ぎしている図など、想像するだに恐ろしい…。

 今日はもう、広間には近付くまい。
最早、身の危険すら覚える。

障らぬ神に祟り無しと云うではないか。
どんな誘いも、完全スルーで乗り切ろう。
ボクにも、それ位の自衛権はある筈だ。