…困った。どうしたら良いだろう?
向坂家には、何やら複雑な事情がありそうだ。
身内の問題に、他人のボクが、安易に首を突っ込んで良いものか?

そもそもボクが会う事で、何かが変わるとは思えない──でも。真織が困っているのなら…ボクで役に立つと言うのなら、出来る限り力になりたい。

 独り懊悩していると、一慶にポンと肩を叩かれた。

「会ってやれよ。マオさんがここまで言うからには、お前が、『紫と会う』という事には何らかの意味があるんだ。…だよな、真織さん?」

 真織は、ほろ苦い笑みを浮かべて頷いた。

「紫は、まだ自分の価値を自覚しておりません。ですが貴女と会う事で、自分の役目を認識してくれる筈です。」

 そう…なのだろうか?

だが、向坂紫には会ってみたい。

次代の《土の星》を担う人物なら、やはり一度は話をしておきたいと思う。

 ボクは、真織の目を真っ直ぐに見据えて答えた。

「ボクで役に立てるかどうか解らないけれど…それでもいいのなら、是非。」

「会って頂けますか!?…良かった。お家騒動に巻き込む様で、些(イササ)か気が退けますが、どうか弟を…紫を宜しくお願い致します。」

 ──結局。

ボクは明日、向坂紫に会う事を約束した。
不安が無いと言えば嘘になる。

けれどやはり、新しい一座の編成に、向坂紫は欠かせない存在だ。これも一つの試練と考えて、ボクは訪問の予定時刻を告げた。