《霊人》の姿が視えなかった者は退役する…そう皆に命じたのは、他ならぬボクだ。

 無論、思い付きで言ったわけじゃない。
六星流に云えば、ちゃんと霊的な根拠があって定めたのだ。だけど…

「あぁ…どうか誤解なさらないで下さい、首座さま。」

 真織が、申し訳なさそうな顔で言った。

「私は、決して卑屈になって言っているのではありません。これは単に、私の資質の問題でして…。この件に関しては、父も充分に納得しているのです。首座さまが、気に病まれる必要はありません。どうか、そんな顔をなさらないで。」

 …そう言うと、いっそう殊勝な面持ちで頭を下げる。

「着任そうそう面倒なお願いを持ち掛けて、大変申し訳無く思っております。当家の内々の事で、わざわざお運び頂くのは、私としても誠に心苦しい。ですが、これ以上避けて通る事も出来ない問題なのです。どうか、お力添え下さい。」

「それは構わないけど…紫と会って、どうすれば良いの?」

「…そうですね。その前に、先ずは当家の事情をお話しなくてはなりません。家の恥を晒す様で、お恥ずかしいのですが…。向坂家の跡目については、もう随分前に、紫が正嫡と決められていていたのです。しかし、母が──」

「お母さん?」