ややあって…
翳(カザ)されていた真織の手が、ゆっくりと離れる。

「はい、終わりました。楽にして頂いて結構ですよ。」

 言われて、思わず瞬きをしたら、目尻の端からホロリと涙が零れた。凄い…目の奥の重さが、嘘の様に消えている。

「如何ですか?」
「うん、楽になったよ。有難う。」

 素直な気持ちでお礼を言うと、真織はいっそう穏やかに微笑んだ。

「それは良う御座いました。ですが、首座さま。やはり一度、詳しい検査をしてみた方が良いでしょう。出来れば明日にでも、私の病院に御越し頂けませんか?それとも…坂井くんの病院で診て貰った方が?」

「いえ、うちは一向に構いませんよ。」

 祐介が、にこやかに答える。

「ご迷惑でなければ、そちらで彼女の検査をして貰えませんか?出来ればその後も、定期的な検診を受けさせたい。何しろ、彼女の目は特殊ですからね。信頼出来る掛り付け医があるのは、我々としても心強い。薙。是非、そうして貰いなさい。明日、向坂医院に行っておいで?」

 最後の方は、ボクに向けた言葉だった。
祐介が気味の悪い程、愛想好く笑うので、ボクも『うん』と答えるしかない。