詠うように紡がれた真織の言葉に、ボクはふと身を硬くした。

「弱点て、どんな?」

「金目になっている時の貴女は、持てる力の全てを使い果たしてしまう様です。上手く制御する訓練をなさらないと…今のままでは、大変に危険です。」

 痛いところを突かれて、ボクは口を噤(ツグ)んでしまった。全て、真織の言う通りだ。

 《金目》になっている間のボクは、心身共に自制が利かなくなる。尊大で…無礼で高慢で大胆不敵な、もう一人の自分が顕れるのだ。

 自分の内から溢れ出る得体の知れない力を、コントロールする事が出来ない。それは、とても恐ろしい事だった。

 真織は穏やかに話を続ける。

「金目の力は、確かに強力です。しかし、あまり長くは保たない。訓練次第では、金目になっていられる時間を延ばす事が可能でしょうが…そうすると当然の様に、元に戻った後の疲労や、体への負担も大きくなってしまいます。今が丁度そういう状態ですね。離脱した後の回復力も、極めて緩やかだ。それに、眼精疲労の兆候も見られます。」

「眼精疲労?」

「ええ。もう少しヒーリングしてみましょう。ちゃんとして措(オ)かないと、頭痛が酷くなって眠れなくなりますよ。」

 そう言って、目蓋の上を優しく撫でた。