「…そんなに爺が心配?」
「お年寄りだもん。心配だよ、勿論。」

 それは、ボクの本心だった。
審議会直後の鍵爺は、疲労の所為か足元も危なげで、顔色も優れなかった。

何しろ高齢だし。
幾ら変態でも、心配せずにいられない。

 すると、遥は渋々の体で口を開いた。

「…あの後、少し部屋で休んで、たった今迎えの車で帰ったよ。その時にはもうピンシャンしていたから、問題ないよ。」

「そう…。」

 ボクは、ホッと安堵の溜め息を吐いた。
それを見ていた遥が、拗ねた様に唇を尖らせる。

「冷たいな、薙は。俺の心配はしてくれないの?爺にネチっこく嫌味を言われて、疲労困憊しているんだから…労ってよ。」

「あはは…お疲れ様。」

「薙は大丈夫なの?眼から血が出ていたじゃない。もう痛くない??」

 そう言って、一段と顔を近付けて来た──その時である。獅噛み付く遥の肩を、祐介が乱暴に掴んで引き剥がした。

「それを、これから診察しようとしているんだけれどね、遥?そろそろ姫を解放してくれないかな。」

「何だよ、いい雰囲気だったのに…。無粋だな、ユウちゃんは。」

 遥は、ぶうぶう文句を言いながらボクを解放した。