「薙~!やっと会えた~!!」

 目が合うなり、遥はクニャリと表情を緩めた。意外に筋肉質な腕がボクの腰に巻き付いて来て、スッと体を引き寄せる。

「…ちょっ、遥!?」

 抵抗する間も無く、ボクは遥の腕の中に仕舞われた。高そうな生地のジャケットが、頬の上をスルリと撫でる。

「ゴメンね、薙。もっと早く会いたかったんだけれど、爺がなかなか離してくれなくてさぁ。」

 そう言って、遥は益々きつく抱き締めた。
熱過ぎる抱擁に、ボクは気が動転する。

「いや、ちょっ…待って、離して!遥とは、今朝も会っているじゃないか!!」

「そうだけどさ。審議会では下座に控えていたし、見ていて本当にハラハラしたんだから。爺に囲まれて怖かっただろう?良く頑張ったね、偉い偉い。」

 そんな事を言いながら、遥は、悪気の無い顔で濃厚なスキンシップを求めてくる。然り気無く頬擦りなどされて、ボクは抵抗するのに必死だ。

 全くこの人は…。
計算なのか天然なのか、どうも良く分からない。

ボクは、巻き付いている遥の腕を振り解きながら訊ねた。

「かっ…鍵爺の様子はどうなの?」

「あぁ─…爺ね。あの人なら大丈夫。当分死にそうにないよ。」

「本当に?」
「本当、本当。」

「でも、かなり疲れた様子だったよ?? 附いていなくて良いの?」

 ボクが訝ると、途端に彼は顔をしかめた。