「総本家の怖い人達に呼び出されたんだろう?知っているよ。」

「それなら尚更早くお願いします。いい加減、からかわれるのにも疲れました。」

 ボクが拗ねると、坂井医師はクスリと笑った。お得意の嫌味な含み笑いではなく、ごく自然に溢れた笑顔だ。そうしていると、やはりとても綺麗な人だと思う。──性格は、最悪だが。

「キミは、自分が総本家に何をしに行くのか知っているの?」

 訊ねられて、ボクは首を横に振った。

知らない。相続の話をするのだとばかり思っていたけれど、こんな言い方をするという事は、どうもそれだけでは無いらしい。

 一体、何なのだ?
親族達の事情など、ボクは知ろうとも思わない。

ただもう、これ以上ボク達親子に構わないで欲しいだけなのに。