「そういう事とは、どういう事だ?」

《風の星》の当主が、首を傾げて言う。

「僕の専門は《降伏術》なんだ。《天解》は門外漢だよ。基礎行程度ならともかく、複雑なのはどうもね。心をガードする事は出来るが、読む方は、てんで苦手だ。況してや、鍵島さんの胸の内など…とてもじゃないが覗けないね。」

「俺もだ。読めて、せいぜい表層意識までだな。深層心理を読むところまでは、到底及ばない。」

 右京に続いて、向坂玲一が嘆息しながら打ち明ける。

「あ。俺も天解はダメ~。」

 烈火が降参のポーズで、茶々を入れた。
緊迫したムードが、ほんの少し緩む。

「どうする、鍵爺?ボクから説明する??」

 鍵爺を振り仰ぐと、老人は『やれやれ』と頭を振って言った。

「世話の焼ける連中や。天解が苦手て何やねん。六星行者の必修科目やないかい。」

 望まない方向に話が反れた事に…鍵爺は、少しだけ苛立ちを見せた。呆れた様に溜め息を吐いて、やおら居住まいを糺す。

「ええか?儂の言いたい事とは、こうや。現当主、及びその四天衆は、次代に役を引き継いだら、総代会には入らず《裏一座》を創設して貰う。表立った仕事はせずに、裏で暗躍するんや。そうして、影ながら首座を支える。…儂はな、右京?『家督を譲れ』言うただけで、『引退せい』とまでは言うてへんで?」

その言葉に、広間は大きくどよめいた。