悔しそうに俯く瑠威に続いて、瑠佳が半泣きで頭を下げた。

何だ。案外、素直じゃないか。
所謂る『反抗期』というやつかな。
──かく言うボクにも、身に覚えがある。 

「あはははははは!! こりゃいい、傑作だ!見事なお裁きですよ、首座さま!」

突然の高笑に驚いて視線を巡らせると、《風の星》の当主が、腹を抱えて爆笑していた。

彼──神崎右京は、目の端に滲んだ涙を、拳で何度も拭ぐいながら、漸く笑いを納めた。それから愉快そうにボクを見て、ニコリと微笑する。

「失礼。こんなに笑うつもりじゃなかったんだが…首座さまの御言葉が、あまりにも小気味良くて。いやはや、感服致しました。この二人を、こうも見事に黙らせたのは貴女が初めてだ。」

「右京、場を弁(ワキマ)えろ。」
「あぁ。解っているよ、庸一郎。」

 隣に居た姫宮庸一郎が、神崎右京の無礼を、さらりに気無く窘(タシナメ)る。

彼等は、長年の戦友だ。

短い遣り取りも慣れたもので、何処か和らいだ空気が流れている。一座の交友関係が少しだけ覗けた気がして、微笑ましい。

 首座である親父を、ずっと支えてくれていた人達…。

庸一郎の忠告を軽く受け流した右京は、尚もくだけた口調でボクに語り掛けてきた。