竜巻は右に左に移動して、あらゆる物を絡め取った。

「きゃあ!」

長い髪を煽られた篝が、甲高い悲鳴を挙げる。
掛け軸が外れてバタバタと宙を舞った。
湯呑みか何かが『ガチャン』と割れる。

 荒れ狂う風に、皆が翻弄されていた。
霊人達も、驚いて姿を消してしまう。

 荒ぶる風。悪戯な風。
二人の心そのままの、勝ち気で気紛れな風。
ボクは…右手を高く差し上げて、これを受け止めた。手の中に、風が吸い込まれてゆく。

「えっ!?」
「うそ!風が消えちゃう!?」

 双子は驚愕の声を挙げたが、ボクは構わず全ての風を掌に収めた。

荒れた室内に静寂が戻ると、込み上げる怒りを抑えて、悪戯な双子に向き合う。

「──瑠威、瑠佳。ボクは君達の手品が見たい訳じゃないんだよ。」

「手品だって!?」
「ひどい!」

「ひどいのは、どっちかな?ボクは『力比べ』がしたくて、当主の代替わりを命じたんじゃない。安易な気持ちで、術を見せびらかすのは感心しないな。」

 双子は同時に黙り込んだ。
瑠佳はシュンと肩を落とし、瑠威はムッと唇を噛む。

「二人共。当主としてボクの元で働きたいのなら、行儀良くしなさい。こういう低次元の悪戯は許さないよ。」

「…はい。」

「ごめんなさい…。」