「良く視てあげて下さい。親しかった肉親も居れば、初めて顔を会わせる祖先も居るでしょう?彼等は、いつもそうして、貴方達の傍らに居て後押しをしてくれていた。なのに…皆いつの間にか、それを忘れてしまっている。」

「…そ、それは。」

 誰かが口篭る声がする。

鎮まりゆく室内。
ユラユラと漂う無数の霊人達に見守られながら、ボクは、ゆっくりと上座を降りた。

──云うべき言葉が、自ずと喉から溢れ出る。

「ボクが《金の星》当主を継承します。」

 不意に、霊人達が傍らに集まるのを感じた。
ボクの決断を歓んでくれている。
為すべき事が──見えてくる。

 ボクは、もう一度同じ言葉を繰り返した。

「甲本家は、ボクが継承する。六星一座の首座になる。そして首座として、皆に最初の命を下します。」

 キッパリ言い放つと、皆が両手を着いて頭を下げた。

「先祖霊の姿が視えなかった方々は、鍵爺の言う通り、当主の座を降りて、速やかに次代に家督を明け渡す事。」

「な──っ!?」
「家督を譲れと仰有るのですか!?」
「…そんな馬鹿な…。」

 息を飲む音がアチコチから聞こえたが、構わずボクは続ける。

「今までの様に、力づくで封じるという方法では、抜本的な解決にはならない。依代の有効期限が切れたら、また同じ苦労を繰り返す事になる。だからボクは天魔と和解し、彼等を『本来在るべき場所』に還す事で、問題を解消するつもりです。」

「首座さま。それはいくら何でも!」