「ｵﾝ､ﾊﾞｻﾞﾗﾀﾞﾄ､ﾊﾞﾝ──！」

　澄んだ声で唱えれば、広間にパァッと光明が射す。同時に、大きなどよめきが起こった。

　それは…とても奇妙な光景だった。
皆の背後に各々の先祖達が立っている。

《霊》など、とうに見慣れている筈のベテラン行者達が…まるで、初めて超常現象に遭遇した者の様に、呆然とそれを見詰めていた。

畏(ｵｿ)れ、戸惑い…時に涙を流している。
人は──親しい霊に触れるとき、心が浄化されるのだ。

現役の六星行者達は、過酷な闘いの中で、いつの間にか、それを忘れてしまっている。《降伏》や《封縛》という方法でしか、霊と向き合う事が出来なくなってしまっている。

そういう『慣れた行者』達には、彼等の様な近しい霊人の姿を視る事が出来なかったのだ。

　ボクは、この場の一人一人を見回してから、徐ろに切り出した。

「──彼等は、ボクの選択を見届ける為に集まってくれた、曾ての六星行者達です。つまり、皆さんのご先祖さまだ。」

　一人また一人と、顔を上げてボクを見詰めた。