広間は相変わらず、騒然としていた。
皆各々に、自身の考えを打つけ合っている。
ボクを信じる者も、期待する者も、疑っている者もいた。

鍵爺が投げかけた問題が、あまりにも重過ぎて…誰もが結論を出せずにいる。このままでは、嫡子審議会そのものが頓挫してしまうかも知れない。

 そんな心配をしていたら、不意に鍵爺が話題を元に戻した。

「…さて。そろそろ結論を出さなあかんな。」

 徐ろに立ち上がった老人を、参座の一同は神妙な様子で見守った。

「御一同さんも、充分お解り頂けたと思う。薙は《神子》や。伸之が掛けた封印も解けて、やっと本来の力が開放された。皆各々に感じとる筈や。嬢が其処にそうして座っとるだけで、なんや知らん…途方もない《力》が、その身から溢れ出しとんのがな。」

 一同の視線が、ボクに集まる。
凄い。全員の念が、一心にボクに集中しているのが分かる。

 それに併(アワ)せて、先程から、『実体の無い人々』が広間を埋め尽す様に、集まって来ていた。

あぁ…成程。
彼等は、六星一座の遠い祖先達なのだ。

ボクの真向かいには、古い時代の首座達が凛と正座して、此方を見ていた。

 ボクと同じ、金目の《神子》もいる。
何かを頻りに訴える…声なき声が聞こえて来る。

「ご隠居。」

 居住まいを糺して、鷹取さんは言った。

「貴方が何としても、彼女を当主に据えたかった理由は良く解りました。彼女が、紛れもなく《神子》である事も…この場の全員が確認した。事実が判明した以上、我等総代としては是が非にでも、彼女に《首座》に就いて貰いたい。しかし…御本人は、どうお考えなのでしょう?」

 ──遂に、この時が来た。