「数十年…又は数百年毎に、新しい依代に移し換えて、封印し直す必要があるんです。」

 淡々とした調子で、蒼摩が話を引き継いだ。

「勿論それは、六星一座と云えども、非常に困難な作業になります。特に、第六天魔と呼ばれる織田信長公の封印には、そうとう手こずる。毎回、何人かの尊い犠牲を伴っています。」

 犠牲──。

死を覚悟して挑まなくてはならない、敵。
神子として生まれたボクは…いずれ、天魔と闘う事になるのだろうか?

 人知れず身を震わせているボクを尻目に…鍵爺は、唐突に話題を変えた。やおら蒼摩を振り向いて、感心した様に話し掛ける。

「しかし、姫宮の坊は噂通りの秀才やな。良くぞ、その理(コトワリ)に気付いたもんや。」

「六星の討伐記録を纏めた《天河抄》には、以前から興味がありましたので、何度も読み返して、自分なりに調べていました。特に、神子と呼ばれる天子の出現については。」

 …そう言うと。
蒼摩は、理知的な瞳を僅かに眇めてボクを見る。

強く深く、心の底を見透す様な眼差し。
彼もまた《魂》が読めない一人だ。

 そうでなくても、蒼摩は少し特別な感じがする。喜怒哀楽や感情の起伏というものが、まるで感じられないのだ。

氷の様に冴えた美貌の内側で、一体何を思うのか…ボクには、まるで想像が付かなかった。