「鍵島の御隠居。そう性急に、事を迫られては此方も対応に困ります。どうか納得のいく説明をして頂きたい。」

 《風の星》の当主・神崎右京が、苛立ちも露わに口を開いた。細身の…少し神経質そうな顔をした男性だ。おっちゃんと同世代くらいに見える。

 まだ若いのに、いきなり世代交代を命じられるのは、やはり不服なのだろう。難しそうに眉間に皺を寄せているのは、彼だけではなかった。

《土の星》の当主・向坂玲一も又、渋面を湛えて鍵爺を見詰めている。

 彼等の魂の周りには、強靭な《壁》が張り巡らされていて、《天解術》を駆使しても簡単に心を覗く事は出来なかったが──不快に歪んだその眼差しが、何より雄弁に彼等の本心を語っていた。

「鍵島の。私も、皆と同意見だ。三家の当主は未だ若く──寧ろ、今が一番脂の乗った年齢だ。家督を譲る必要があるとは思えない。」

 白髪頭の初老の男性が、口を挟む。
この人は、先々代の四天だったようだ。

「後継者に全てを引き継ぐには、それなりの時間を要するもの…。中には、未だ正嫡が決まっていない一族もある。それでも代替わりせよと言われるなら、先ずは、その理由を明確にして頂きたい──!」

向坂玲一が、意を決した様に進言すると…

「同感ですね。」
「詳しい説明を求めます。」
「一方的にも程がある。」

…と、皆が口々に合いの手を入れた。

「今日は《金の星》の嫡子審議を執り行うために、皆が集まったのですよ?他家の継承問題にまで話を拡げられては、審議になりません。」

「そうだ!」
「その通り!」

 鷹取の言葉に、総代衆も次々と抗議の声を挙げた。

中には『筆頭総代、横暴なり!』と、あからさまな野次を飛ばす者も居る。

広間は、怒号の嵐で騒然となった。