すると、鍵爺は大きく目を見開いた。

「姫宮の坊か。よう気が付いたな。その通りや。」

「先程、薙さんが《天解》を使った一瞬、鍵島さんの魂魄の一部が僕にも視えました。」

 蒼摩の澄んだ眼差しが、真っ直ぐにボクを見詰めた。

「凄い力です、薙さん。この僕が一瞬で取り込まれてしまった。貴女が天解を使った瞬間から、色んなものが視えました。同じように、天解の行者達には視えた筈だ。僕らは今、明らかに同調していた。小椋さんも篝も…僕と同じものを視ましたよね?」

コクリと頷く篝。
苺は、片眉を吊り上げただけだった。

 蒼摩は言う。

「六星天河抄に詠われている一文は、禍星(マガツボシ)と呼ばれる悪星が、この世に何度となく顕(アラワ)れては人心を惑わし…世に災いを持たらしてきた事を示しています。──僕が思うに。薙さんが必要とされるのは、この《禍星》に対抗する為ではありませんか?」

 理路整然とした説明だった。
あの鷹取さえも黙らせる程の──。
鍵爺は白濁した瞳を一瞬、宙に泳がせる。

「蒼摩は利発な子やなぁ。既に、当主の器を備えとる。お前の様な若いもんが、嬢の代の六星には必要なんや。」

「御老…何をいきなり?」

 鷹取の言葉を遮る様に、鍵爺は見えない目を、三家の当主達に向けた。

「…庸一郎、右京、玲一。お前達当代の六星には、ほんまに感謝しとる。今まで、よう働いてくれた。だが、そろそろ潮時や。新しい時代の《首座》には、同じ様に、新しい若い六星の当主が附くべきや。ここらで代替わりして貰いたい。」

「だ──代替わり!?」

 三家の当主は、一斉に顔を見合わせた