「こっちの人。」

 ボクの手が、また勝手に持ち上がった。
鷹取氏の隣に座る、初老の男性を指差す。

「貴方は高西幸紀(タカニシ コウキ)。先々代の南天だ。」

「その通りだが、それが何か?」

「貴方の背後に、第五五七世の当主が見える。あぁ…この人は、貴方の曾祖父に当たるんだね。だからかな?とても心配しているよ。貴方…胃の右側に腫瘍がある筈だ。このまま放置していては、いけない。一度、祐介に診て貰うといい。」

 初老の男性──高西幸紀は、口を半開きにしたまま固まってしまった。病の事は、家族にも秘密にしていたらしい。

 ボクは、良心の呵責を覚えた。
本人達が望んだ事とは云え、これは明らかなプライバシーの侵害だ。

もう、やめたい…こんな事は。

「まだ、やるの…鍵爺?」

 訴えるボクを見ても、鍵爺は許してくれなかった。ニヤリと笑って、物色する様に広間を見渡す。

「…嬢。次は、あの男や。」

 鍵爺が指差した先には、凛と顎を聳やかした痩せ形の男性が座っていた。

 …あの人は確か、姫宮家の当主だ。
六星一座《水の星》の行者──。

まさか、そんな人の魂魄まで視ろと言うのか?