「名前…この人の名前は、鷹取雅彦。」

　ボクは、無意識の内に声を発していた。
スッと手が上がり、鷹取氏を指差す。
そんな事、したくないのに。
体が勝手に動いて…止められない。

「貴方は、現･四天の西天だ。歳は四十八。降伏の行者で、職業は整体師。家族構成は三人。内、娘と息子が一人ずつ。妻は四年前に亡くなっている。死因は子宮癌。享年四十歳。」

　一体どうしちゃったんだ、ボクは？
我ながら驚く程スラスラと、言葉が出て来る。
次々と淀み無く紡ぎ出される『事実』に…鷹取氏は、「うっ」と呻いて喉仏を大きく上下させた。

「た、確かにその通りだが…。それは調べれば誰にでも解る事だ。」

「八年前。」
「む…？」

「八年前…貴方は、出雲の《討伐》で怪我を負った。肋骨を二本も折ったのに、それを『誰にも』言わなかった。」

　鷹取雅彦は、忽ち顔色を失って絶句した。言い返せないのだろう。だって全てが『事実』だから。

　あぁ…
この人の全てが視えて来る。

ぼんやり浮かぶ球体の中には、彼がこれまで経験してきた沢山の『情報』が詰まっていた。