遂に、『手』の封印が外れた。
掌の中心がジンと熱くなったので、そうと解る。

「ほれ見てみい。上手いこと全部、外れたがな。これが鍵島の奥義や。どや、嬢?体が軽なったやろ??」

「うん…そうかも知れない。」

「そら良かった。伸之は、アンタを守る為に、様々な工夫をしとったようや。人形使こて間接的に外さなあかんよな、複雑な《鍵》を掛けて逝きよった。今頃、『俺の娘に触るな!』言うて、怒っとるかも知れんな。」

 そう言って、鍵爺は笑うけれど。
──本当だろうか?
今更解る筈もない、死んでしまった人の気持ちなんて…。

「さて、仕上げと行こか。」

 鍵爺がパンと手を打つと、身代わり人形は微塵に千切れて宙に消えた。

「ほれ、嬢。目ぇ閉じて印を結んでみ?」

 言われた通り、ボクはそっと目を閉じる。

「足は結跏趺座(ケッカフザ)に──手は、こうや。左手に右手を乗して、空指(クウシ)…親指の先を突き合わせる。組んだ手が潰れん様に…あぁ、そうそう。それが、法界定印(ホッカイジョウイン)や。」

 鍵爺の指導で、ボクは生まれて初めて、自らそうと意識して《印》を結んだ。

不思議だ…心がスッと落ち着く。