広間が、一際大きくどよめいた。

「静かに──静かにしてくれ！」

おっちゃんが、必死に皆を宥める。

「…頼む。まだ終わってねぇんだよ。」

　苦渋に満ちたその声に、立ち上がり掛けていた烈火と沙耶さんも、小さく溜め息を吐(ﾂ)いて座り直した。

　重苦しい沈黙が、降りて来る。

一慶達も、苦々しい表情でじっと見守っていた。誰も、鍵爺の遣(ﾔ)り方に、口を出す事など出来ないのだ。

　ピンと張り詰めた空気の中──。
鍵爺は、白濁した瞳でボクを見上げると、ポンポンとボクの頭を叩いた。

「…嬢。もう一息や。直ぐに、その《鍵》外したるよってな？」

　それから、徐(ｵﾓﾑ)ろに下座を振り返り──

「遥、よう見とき。鍵島の行者はな。如何なる封印も、解かなならん。『外す』も『掛ける』も自由自在、それが鍵島流の極意や！」

　…広間の奥で、遥が膝の上に拳を握り、ギュッと唇を噛んでいるのが見えた。

「しゃあない、では鍵島流の奥義を御披露しよか。普段は、ようせんのやけどな。今日は特別大サービスや。」

　鍵爺の顔の皺が、グッと濃くなった。