鍵爺の術が途切れて、ボクは漸く痛みから解放された。

ボヤける視線で辺りを見回すと、その場に居合わせた者全員が、何か恐ろしいものでも見るような目付きで、こちらを見ている。

「薙…お前、目が…っ!」

 烈火が掠れ声で呻いた──刹那。

「きゃあっ!」

篝が口元を両手で覆って、悲鳴を挙げた。

 目?ボクの目が…何!?

そう言えば、さっきから涙が止まらない。濡れた頬を何気無く拭うと、手の甲にベタベタした液体が付着した。

何だろう、これは?
涙にしては、厭(イヤ)に紅いような…。

 カクンと首を傾げた──その時だった。顔を傾けた弾みで、目の端から涙が一滴、溢れ落ちた。

 ──ポタリ。

畳に、円形の血溜りが出来る。

「これ…血?」

ボクは、恐る恐る目の下に触れてみた。
忽ち、指先が鮮血に染まる。

 ボクの目から──血が流れている?

先程から頬を濡らしていたのは、涙が混じった血液だったのだ。