「どうしてぇ?いくら実の父親でも、骨を持ち歩くなんて、気持ち悪くないの??」

「気持ち悪くない!! 大事な形見だよ!いいだろう、それくらい?? 親父の形見なんて…他に何も無かったんだから!」

 訳の解らない苛立ちが募り、つい声を荒げてしまう。──こういう反応が返ってくるだろう事は解っていた。だから、言いたくなかったのに。

「薙、ごめんね。怒っちゃった?」

 鼻に抜ける様な甘え声で、ボクを覗き込む苺。だけどボクはもう、聞く耳を持たなかった。

「怒ってないよ。唯もう構わないで欲しいだけ。これ以上、巧く説明が出来ないし、自分でも、どうしてそんな事をしたのか解らないのに…説明なんて出来る筈がないんだ。解って貰おうとも思わない。」

そう言った途端──
一慶が、改めてボクを真正面から見据えた。

「薙。」
「厭だ、もう何も答えない。」

 ボクは、耳を塞いで言った。

「…もう何も聞きたくない。ボクの事は放っておいて。甲本の本家には、退院したら自分で行く。」

「そうはいくか。こっちはその『本家』の命令で、お前を迎えに来ているんだよ。明日の朝、改めて迎えに来る。」

 律儀な一慶の言葉に、ボクは思わずカッとなった。

「勝手にどうぞ!」