午前十時──。
母屋の大広間に、総代衆とゲスト達が集結した。

火、水、風、土、木──
《金の星》以外の当主が、揃い踏みである。

 氷見に伴われて広間に入ると、参集した全員の視線が、一斉にボクに向けられた。

ザワ…と静かなどよめきが起こる。
怖い──束の間、足が竦む。

 …と、その時。
視界の端に一慶、祐介、遥、苺の姿が映った。皆いつも通りのリラックスした表情で、広間の下座に着座している。

 ヒラヒラと手を振る遥の顔を見た途端、不意に緊張が解けた。

氷見に促されて──ボクは上座まで進む。
事前に教えられた様に、参座者に向き直ると、膝を着き深々と頭を下げた。

 すると。全員が一斉に、三つ指を着いて頭を下げる。

 ザ──。

重なる絹擦れの音が、さざ波の様に、広い和室に響いた。

 凄い…

こんなに大勢の人に、一度に頭を下げられたのは生まれて初めてだ。

 上座に着座して改めて広間を見渡すと、参加者の中には、幾つか見知った顔が在った。

 蔡場篝…《木の星》の当主。

潤んだ眼差しでボクを見上げている彼女も、今日はキリリと正装している。

 火邑烈火…《火の星》の当主。

何故か一人だけラフな普段着のまま、不遜に胡座を掻いている。ボクと目が合うと二本指を額に掲げて、チャ!と敬礼をした。

 鏑木沙耶…《金の星》の現四天。

甲本家を表す群青色を身に纏った沙耶さんは、一段と艶かしく美しかった。

 そして──。
ボクの直ぐ左脇には『おっちゃん』こと、首座代理・甲本孝之が座っていた。

心配そうに眉間を皺立て、チラチラと気遣わし気な視線を投げて来る。

『大丈夫。心配しないで』

 安心させる様に微笑むと──ボクは、おっちゃんに小さく目配せをした。

…と、そこへ。
唐突に襖が開いて、小柄な老人が入って来た。