朝早くから、やけに屋敷の内外が賑やかだ。
見た事も無い高級車が頻繁に行き来しているし、人の足音や話し声も、普段より多い気がする。

 気忙しく廊下を歩く足音。
家政婦さん達が、屋敷番から何事か指示を受けている。通いの《護法》も、いつもより沢山詰めているようだ。

 二つある厨房は何れもフル稼働で良い薫りを立てているし、何やら妙に活気に溢れている。

「凄いわねぇ。久し振りに見たわ、此処がこんなに賑やかなの。」

 そう呟いて窓辺に頬杖をつく苺が、とても可愛いらしかった。ワンピースのリボンがフワフワ揺れて、仔猫の尻尾みたいに見える。

 ──と、その時だった。

「ぐげ!何あれ、嘘でしょう!?」

 苺が、すっ頓興な叫び声を挙げた。

「もう~何だよ、苺は!? 今、口紅塗ってんだからさぁ!ビックリさせないでくんない?手元がブレちゃうよ。」

「だって大変なんだもん!ちょっと見てよ、あれ!!」

 尋常でない慌て振りに、ボクと遥は、思わず顔を見合わせた。急いで窓際に駆け寄り、外を覗くと…。

「げっ…何あれ、マジかよ!?」

 途端に、遥の顔が凍り付いた。
視線の先には、精悍な顔立ちの中年男性と長身痩躯の少年がいる。