…つまり、ボクが助けられたのは、偶然ではなかったのである。この病院に運ばれたのも、予(アラカジ)め用意されていたシナリオの一つに過ぎなかった。

「ねぇ、薙。いつまでも怒っていないで、ちゃんとお話しましょうよ──ね?」

 ベッドの端に頬杖をつくと、苺は上目遣いにボクを視た。ふわふわのツインテールを弾ませながら、『こっちを向いて』とせがんでいる。

 …見れば。ボクと同い歳くらいなのに、まるで年下の子供みたいだ。その向こう側では、一慶が腕を組んで壁に寄りかかり、じっと此方を窺っている。

「………。」
「………。」
「………。」

 重すぎる沈黙──
二人の視線が痛い。
その雰囲気に耐えきれなくなって、ボクは、ポツリポツリと事情を話し始めた。

「…アレは……」
「アレは?」

 苺が身を乗り出す。

「アレは、ボクの御守りなんだ。」
「御守り?骨が?」

「あまり感心しない趣味だな。」

 …そう言われるだろうとは思っていた。またしても押し黙りそうになるボクに、一慶が容赦無く畳み掛けてくる。

「それで?お前は、死んだ親父さんの骨を、どうやって手に入れた??」

「火葬の後だよ。納骨の前に…。」
「盗んだのか。」

「盗んだんじゃない!少し…分けて貰ったんだ。」

「えぇ?!」

 苺は、大仰に驚いて見せた。
きらきらのアニメ声が、ヤケに耳につく。