困惑のまま突っ立っている間も、苺の手は休む事が無かった。
どうにか襦袢を着せられたボクは、大きな鏡の前に立たされる。
苺は、畳紙に包まれた着物を大事そうに広げた。

「さぁ、これよ!アタシのとっておき!!」

そう言って両肩に掛けられたのは、目にも鮮やかな、群青の着物だった。

 左肩から右胸の辺りに掛けて、銀糸の刺繍で、見事な『鳳凰(ホウオウ)』が施されている。これは…まるで。

「素敵でしょう?」

 苺が、うっとりと目を細めた。

「群青は『甲本家』を表す色、銀は『直系』、鳳凰は『天子』を意味する柄なの。古くからの倣わしよ。」

 天子──?
そんな重要な意味がある着物を、ボクが着るなんて…