──間も無く。
氷見は、部屋に膳を運んで来てくれた。
夕食も近いので、軽めの食事だ。彼の、こういう気配りが嬉しい。

 腹ごしらえが済み、モバイルフォンの時計表示を見れば、ちょうど四時半を過ぎたばかり。する事もなくボーッといたところへ、不意に内線電話が鳴った。

『薙、起きていたか?』

 この声は…

「一慶?」
『あぁ。今、何してる?』

「別に何も…」
『なら丁度良い。少し出られるか?』

「うん、大丈夫。」
『じゃあ、東の対に来てくれ』

 ──東の対?
あそこは、封鎖されている筈だけど…?
一慶は詳しい説明も無く、サッサと電話を切ってしまった。

何が何やら、さっぱり解らない。
とにかく簡単に身形を整えて部屋を出た。