「死者には、二種類ある。自分の死を受け入れる者と、受け入れられない者だ。彼女は、受け入れる側の者だった。だから、ああして無理矢理生かされている事に、苦痛すら感じていたんだ。死を自覚した者は、次のステージを目指して、魂の居場所を移そうとする。彼女も…次の世に生まれる為に、転生の輪に戻ったんだんだよ。」

 祐介の言葉を、ボクは何処か上の空で聞いていた。

結局。ボクは、また何も出来なかった。
親父の時と同じ様に…手向けの言葉さえ贈れなかったのだ。

 もし、自分に力があるのなら──。
その使い方を正しく理解していたなら…もっと別の方法で、彼女の役に立てたかも知れない。

『救う』だなんて…そんな烏滸がましい事は、とても言えない。けれど──

もっと知識があれば。
もっと力があれば。
もっと冷静さがあれば。
もっと思慮深ければ…

彼女の為に出来る事が、少しだけ増えたかも知れないのに──。