「勿論、今のキミには無理だろうね。だが、いずれはやって貰う事になるよ。キミが外に出る度に、こんな事が続いたんじゃあ…お互い、身が保たないだろう?」

 確かに──仰せの通りだ。

怠惰な気分で目を閉じた途端。
祐介が、徐ろにカーテンを開けた。
眩しい光が、一気に部屋に充満する。

「少しの間、こうして日天(ニッテン)の恵みを受けると良い。暖かな陽射しが、キミに回復力を与えてくれる。」

「うん。」

 閉じた目蓋に日光を感じながら…ボクは、薄暗い病室に横倒わっていた少女を思い出した。

「──ねぇ、祐介。あの子は、どうしたの?ほら…高原奈津美ちゃん。」

「彼女は──」

 祐介は、少しだけ躊躇してから言葉を続けた。

「彼女は三ヶ月も前から、ああいう状態だったんだ。回復の見込みは無かった。君が倒れた後、急変して…そのまま…」

「そのまま……?」
「亡くなったよ。」

 亡くなった──
その言葉は、ボクの胸を深く抉った。

彼女自身が望んだ事とは云え…いざこういう結末に辿り着いてみると、何とも言えない後ろめたさがある。

「もう魂が保(モ)たなかったんだ。本人が一番良くそれを理解していたよ。だからキミに助けを求めたんだ。最期に、母親と話したかったんだろう。」

 そんな…!
ボクは、彼女に何もしてやれなかった。
体を貸した訳でもない。
唯──奪われたのだ。