一連の動作を大人しく見守っていると、彼は結んだ印を即座に解いて、また別の形を作った。伸ばした両の人差し指と中指を交差し、手の甲を上に向ける──刹那。

「妖魔邪気退散!」

 また、ピリ!と頭が痛んだ。
この動作を…彼は、何度か繰り返す。

体の奥がキリリと締め付けられて──ボクは、もうクタクタだ。祐介が何事か唱える度に、苦しい様な切ない様な…複雑な感情が込み上げる。

「悪霊妖気退散、妖魔邪気退散……」

 それは、暫し淡々と繰り返された。
結んでは解き、解いては又結んで──。

そうして何度目かの印を結び終えた後、彼は刀印を組んで九字を切った。

「臨兵闘者、皆陣列在前!」

 途端に、フワリと体から力が抜ける。
押し寄せる虚脱感にポ~ッとしていると、祐介がクシャリとボクの髪を撫ぜて笑った。

「お疲れ様。全て恙無(ツツガナ)く終わったよ。」