その後も色々と立て込んでいて、謝るタイミングを逸してしまったのが、何より痛かった。

 …聞けば。
彼等は、ボクの従兄妹に当たるらしい。極めて親(チカ)しい間柄にも関わらず、顔を合わせたのは、これが初めてだ。

 そもそも。ボク達家族は、諸般の事情から、親父の実家である甲本家との交流が全く無い──なのに。当の親父が亡くなった途端、名指しで呼び出され、会った事も無い親族達と相続の話をする事になってしまった。

 煩わしい事この上無いが…放って措けば、後々ややこしくなってしまうのが、遺産相続問題である。

仮にも親父は、甲本家の長男──。

詳しいところは解らないが、何やら由緒ある古い血筋の一族であるという噂だけは聞いている。わざわざ、こうして呼び出される位だから、きっと、それなりの資産があるのだろう。

 こういう事は、初めが肝心だ。
面倒を嫌ったばかりに、親族間の揉め事に巻き込まれては敵わない。遺産など要らないから、放って措いて欲しいと、キッパリ伝えておかなくては──。

 そんなこんなで、ボクは渋々、田舎から出る決意をした。一慶と苺は、それを迎えに来てくれたのである。

 指定された日時に指定された場所へ、ボクは向かっていた筈だった──ところが。