それから一体、どれ程の時間が経ったのか──気が付けば、ボクは病室のベッドの上に身を横倒えていた。

 何だろう、この既視感は?
前にも、こんな事があった気がする。

 あぁ、そうだ。
初めて一慶と苺に会った、あの日。
熱中症で倒れて…同じベッドに寝かされていたっけ。

 おかしな気分だ。
つい先日の事なのに、何だかとても懐かしい。

「薙さま、気が付かれましたか?」

 ふと、穏やかな声がボクを呼んだ。

静かに顔を巡らせると、ベッドの脇に氷見秋彦が控えている。心配そうな眼差しを投げる彼に、ボクはそっと微笑み掛けた。

「氷見、助けてくれてありがとう…」

渇いた喉から、漸く声を絞り出すと、氷見は痛々し気に眉根を寄り合わせて訊ねた。

「御気分は如何です?」

「うん…大丈夫。」

 起き上がろうと身動ぎすると、氷見は静かにそれを制して言った。

「まだ起きてはいけません。今、祐介さまを御呼び致しますから。…ちゃんと診て頂きましょう、ね?」

「うん、でも。」

 もう、大丈夫だなのだけれど…。
そんなボクの心を見透かした様に、氷見は少しだけ表情(カオ)を尖らせた。

「ご無理なさってはいけません。お体に障ります。」