バン!という音と共に、病室の扉が開かれた。血相を変えた氷見が飛び込んで来る。

 …そうして。朦朧とするボクを見るや、掻き抱く様に体を引き寄せ、呼び掛けた。

「薙さま、いけません!!目を覚まして!」

 大声で名を呼ばれ、肩を揺さぶられる。
ボクの頭は、人形の様にガクガクと振れた。

「薙さま、戻って!意識を手放してはいけません!!体を盗られますよ!」

 何度もペチペチ頬を叩かれて…ボクは、次第に自我を取り戻していった。うっすらと眼を開けた途端、不意に奈津美の意識が消える。

いきなり支配を解かれたショックで、ボクは一気に脱力した。

「危ない!!」

 ズルリと滑り落ちた身体を、氷見が空かさず抱き留める。

「大丈夫ですか、薙さま?」
「…氷見…」

 見開いた視界一杯に、彼の心配そうな顔が映った。無意識に差し延べた手を…氷見は、ギュッと握り返す。

…来てくれた。
そう思った途端、急に緊張の糸が解けて…
ボクはそのまま、深い眠りに堕ちていった。