「ねぇ、そろそろ機嫌を直してよ。」

 ツインテールのコスプレ少女が、甲高いアニメ声でボクに阿(オモネ)る。

彼女の名前は、小掠苺(オグライチゴ)──。
何やら、甘くて美味そうな名前だ。

「どうして薙は、お父さんのお骨を持ち歩いていたの??あの骨、どこで手に入れたのよ?もしかして、お墓を掘り返したの??」

 根掘り葉掘り詮索する苺は、すっかり馴れ合いモードだ。

 …薙(ナギ)。
とても自然に、そう呼ばれているが…

もう先程の様な違和感や不快感は無かった。
寧ろ、名前を呼ばれる度に、彼等との距離が縮まって行く気がする。

まるで、昔からの知り合いの様に──。

「ねぇ、黙っていないで教えてよ。ねぇねぇ、薙ってばぁ!!」

 甘えた振りをして、苺はボクに擦り寄ってくる。

煩わしさに視線を背ければ、憮然とした様子で壁に寄り掛かっていた長身の男…甲本一慶こうもと いっけいと目が合った。

『ふん』と外方(ソッポ)を向かれて、また少し気不味い空気になる。

 無理もない。
怒り心頭に達していたとは言え、ボクは彼を押し倒した上に、絞め技まで喰らわせたのだ。