少女の肩を支えながら、ボクはエレベーターに乗り込んだ。

「病室は何階?」

そう訊ねると、少女はスッと手を伸ばして階のボタンを押す。

 最上階…
かなり上等の個室があるフロアだ。
もしかして、良いところのお嬢様かな?

横目でチラと盗み見ると、思い掛けず視線が交わった。途端に、フワリと微笑される。

 不思議な子だ。実体感があるのに、どこか透けて見える様な…?

 奇妙な違和感に戸惑いながら…。
エレベーターが止まるまでの僅かな時間を、ボク達は会話も無いままに過ごした。

 ポーン!

軽快なチャイムと共に、漸くドアが開く。
微かに安堵の溜め息を吐くと──ボクは、少女の背に軽く手を添えながら、病室へ向かった。

「何号室?」

最終目的地を訊ねれば、少女はスイと手を挙げ指を差す。

「…ずーっと向こう…」

 ──『向こう』?

彼女が指差す方向には、全く同じ造りのドアが、ズラリと並んでいる。

 あの一番端にある部屋だろうか?
かなり遠いが、乗り掛かった船だ。
自分から言い出したのだから、投げ出したくもない。

 コツンコツン…と足音を響かせながら、ボクは彼女の部屋を目指した。病棟の端まで歩いた處ろで、不意に袖口を引かれる。

「この部屋?」

問い掛ければ、少女はコクリと頷いた。
510号室──本当に角部屋だ。

「入って。」

 掠れる様な声でそう言うと…少女は、ジッとボクを見詰め上げた。