「で、検査結果だけれど。」
「…はい。」

 不機嫌に座り直したボクを見て、祐介が僅かに笑った様に見えた。

「通院する程では無いにしろ…やはり軽度の貧血症状が認められる。キミに必要なのは充分な休養と、バランスの良い食事だ。特に、血液を造るのに必要な栄養素を意識して摂るようにしないとね。薬に頼ってばかりじゃ駄目だよ?体質改善を心掛けないと。」

「はーい…」
「返事は『はい』で良し。」

そう言って、ボクの額をコツンと叩く。
彼のこういう處ろは、普段のそれと変わらない。

「キミ、今日は誰と来たの??氷見君?」

ボクが頷くと、祐介は引き出しから小さな冊子を取り出して手渡した。

「じゃあ、これを彼に渡しておいて。食事療法の『手引き書』だ。必要な栄養素と簡単なレシピ例が書いてある。今日の夕食から、こういう内容の食事に変えて貰うように。帰ったら、僕からも改めて、料理番に説明するつもりだけれど…。」

『帰ったら』という祐介の台詞が、何だか妙に嬉しかった。

屋敷に帰ったら──祐介が居て、苺が居て、遥が居て、一慶が居る。そういう生活が当たり前になりつつある自分に、また少し驚く。