ハラハラと気を揉みながら、成り行きを見守っていた…その時である。静かな朝の中庭に、遥の声が朗々と響き渡った。
「オン、アミリテイ、ウンハッタ、ソワカ!」
ザザ────!!
詠唱と共に、爛漫と咲き誇っていた紅梅の花が、音を立てて落下した。
一斉に花を散らすその光景は、まるで血の雨を降らせた様である。情緒だとか風流だとか言う形容は、一切当て嵌まらない。
「凄い…」
呆然と呟くボクの腕を、遥が掴んで引き寄せた。
「まだ来る!隠れて!!」
「え?」
グイと体を引っ張られて、不意に二人の立ち位置が変わる。──刹那。視界の端に、異様な光景が飛び込んで来た。
「花が…動いている!?」
信じ難い事が起きていた。
地面に落ちた梅の花々が、ザワザワ動いて一箇所に集まり、縄の様に寄り合わさって行くではないか!
──それは宛ら、何者かに『別の命』を吹き込まれたかの様だった。
ボク等の見ているその前で、紅梅の花々が怪しく蠢めき、見る見る形を変えてゆく。
…『花』が『蛇』に姿を変える。
悪夢の様なメタモルフォーゼだ。
気が付けば。無数の紅い花弁の山は、地面で不気味に絡み合う《蛇》の大群と化していた。
「オン、アミリテイ、ウンハッタ、ソワカ!」
ザザ────!!
詠唱と共に、爛漫と咲き誇っていた紅梅の花が、音を立てて落下した。
一斉に花を散らすその光景は、まるで血の雨を降らせた様である。情緒だとか風流だとか言う形容は、一切当て嵌まらない。
「凄い…」
呆然と呟くボクの腕を、遥が掴んで引き寄せた。
「まだ来る!隠れて!!」
「え?」
グイと体を引っ張られて、不意に二人の立ち位置が変わる。──刹那。視界の端に、異様な光景が飛び込んで来た。
「花が…動いている!?」
信じ難い事が起きていた。
地面に落ちた梅の花々が、ザワザワ動いて一箇所に集まり、縄の様に寄り合わさって行くではないか!
──それは宛ら、何者かに『別の命』を吹き込まれたかの様だった。
ボク等の見ているその前で、紅梅の花々が怪しく蠢めき、見る見る形を変えてゆく。
…『花』が『蛇』に姿を変える。
悪夢の様なメタモルフォーゼだ。
気が付けば。無数の紅い花弁の山は、地面で不気味に絡み合う《蛇》の大群と化していた。