ボク等は、長い長い回廊を巡りながら、長い長い話に花を咲かせた。会話の合間に何度か立ち止まっては、仕掛けられた式神を排除する遥。
近頃は、これが彼の朝の日課になっていると言う。
「ボクの所為《せい》で…ゴメンね、遥。」
「厭《いや》だな、どうして謝るの?薙は全然悪くないよ。気にしない気にしない、ね?!」
屈託の無い遥の笑顔は、いつもボクを安心させてくれる。和やかな雰囲気のまま…ボク等は漸く、西の渡殿を行き過ぎた。
そうして。
母屋の入口に差し掛かった時のこと──
「あれ…?」
中庭の『奇妙な風景』に目が留まり、ボクはふと足を止める。
「遥、見て。秋なのに梅が咲いている。」
「え──?」
中庭に視線を投げた途端、遥は、僅かに双眸《そうぼう》を眇《すが》めた。
「ぅわ、最悪…!」
傾斜の弛い遥の眉が、忽ちギュッと寄り合わされる。吐き捨てた呟きは、いつにない緊張と嫌悪感に満ちていた。
ボク等が見詰める先には、季節外れの紅梅が咲き乱れている。
厳しかった残暑も漸く峠を越し、涼風が吹き始めた初秋の中庭──其処に。
一本の梅の木が、目にも鮮やかな紅を湛えて、これ見よがしに立っていた。
近頃は、これが彼の朝の日課になっていると言う。
「ボクの所為《せい》で…ゴメンね、遥。」
「厭《いや》だな、どうして謝るの?薙は全然悪くないよ。気にしない気にしない、ね?!」
屈託の無い遥の笑顔は、いつもボクを安心させてくれる。和やかな雰囲気のまま…ボク等は漸く、西の渡殿を行き過ぎた。
そうして。
母屋の入口に差し掛かった時のこと──
「あれ…?」
中庭の『奇妙な風景』に目が留まり、ボクはふと足を止める。
「遥、見て。秋なのに梅が咲いている。」
「え──?」
中庭に視線を投げた途端、遥は、僅かに双眸《そうぼう》を眇《すが》めた。
「ぅわ、最悪…!」
傾斜の弛い遥の眉が、忽ちギュッと寄り合わされる。吐き捨てた呟きは、いつにない緊張と嫌悪感に満ちていた。
ボク等が見詰める先には、季節外れの紅梅が咲き乱れている。
厳しかった残暑も漸く峠を越し、涼風が吹き始めた初秋の中庭──其処に。
一本の梅の木が、目にも鮮やかな紅を湛えて、これ見よがしに立っていた。