そうして遥は、母屋に向かう道すがら、鍵島家の詳細を語ってくれた。

「…鍵島家はね。平安時代、宮廷の中務省・陰陽寮に仕えた、陰陽師の家柄なんだ。」

「陰陽師…」

 茫然とするボクを見て、遥は、やっといつもの笑顔に戻った。

「鍵島家縁りの者の多くが《式神》を使役出来るのは、その所為だよ。あれは本来、陰陽道の術だからね。六星行者は密教の僧侶だから、式神は使わない。…というか『使えない』のが普通なんだ。」

 それを聞いて。
ボクはふと、一慶の言葉を思い出した。

『一座の中でも、式神を使えるのは限られた人物だけだ』

 確かに、彼も同じ事を言っていた──。
成程。あれは、こういう意味だったのだ。

「少し難しくなるんだけれど。」

 そう前置きをしてから、遥は語り始めた。

「良い機会だから、仏教と陰陽道の違いを教えてあげるよ。仏教の伝来は、飛鳥時代だ。聖徳太子が、国の思想統一を図る目的で広めた、外来の宗教だって事は…勿論、知っているよね?」

「うん。」