「それで…どう思われますか、私の事?」

今や篝は、組んだ両手を胸の前に掲げ、『乙女の祈り』のポーズで、ボクの答えを待っている。

「もし、首座さま直々のお墨付きが頂ければ、一族の者も、一座の皆様も、私を当主として認めて下さると思うんです。」

「…それで、ボクを訪ねて来たの?」

篝はコクンと頷いた。

 …どうしよう?
えらい事になってしまった…。
ボクは彼女に、一体どう答えれば良いのだろうか?

「あの…篝?」
「はい。」

「さっきから言うように──ボクは未だ、首座じゃないんだ。」

「じゃあ、正式に首座に成られたら、お答え頂けますか?」

「へ──?」

「明後日…《金の星》の総代審議会が行われるという話は、一座の連絡網で皆が知っています。晴れて当主と成られたら…その時こそ、私の質問に答えて頂けるでしょうか?」

 あまりに真剣なその眼差しに…ボクは思わず、こう答えてしまった。

「そうだね。ボクが正式に当主に──首座に任命されたら、その時は篝の質問にも、ちゃんと答えるよ。」

「本当ですか?」
「うん。約束する。」

 途端に。
篝は、ふわりと口元を綻ばせた。

「有難うございます!! 私、待ちます!首座さまの御審議が降されるのを、楽しみに待っていますね?」

「…ぁ、うん。そう、だね。あはは…」

 あぁ、言っちゃった…
成り行きとは言え、安請け合いにも程がある。
却って自分を追い込む形になってしまって…馬鹿だな、ボクは。