「──え?」

 今度は、篝が驚く番だった。
ボクは構わず、同じ質問を繰り返す。

「君を『頼りない』と言っているのは誰?知っている人!?」

「それは…」

篝は、ふと視線を外した。

「誰と、はっきり特定する事は出来ません。でも、皆がそう考えているのは、事実です。蔡場の当主は気が弱くて困ると…。でも、これが私の性格なんです。勿論、努力はしているつもりですが…なかなか直せなくて…」

「…篝…」

「最近、良く思うんです。そんなに心配なら、私を選ばなければ良かったのに…。妹の瞳子(トウコ)の方を、当主にすれば良かったのにって。」

 篝の目が、ジワッと潤んだ。
泣いたり笑ったり哀しんだり──この子は本当に、感情の振り幅が大きい。

思春期だから、だろうか?
少し扱い難いが──でも。
彼女の不満は、痛い程良く理解出来た。

勝手に当主に選んでおいて、『頼りない』だの『幼い』だの──そんな事を言われる筋合いは、無い。

もしボクが、当主になったら…。
篝が抱える悩みは、そっくり我が身に振り掛かって来るだろう。

 そう思うと、何だか他人事には出来なかった。